
聴力は視力と同様に加齢と共に低下していきます。視力の場合は、新聞や雑誌などの文字の見えやすさが判断の材料になりますが、聴力の場合はその認識が難しいと言われています。普段の会話が聞こえにくいレベルになると聴力はすでに大きく低下していて、対処が難しくなります。
健康診断では、オージオメーターという機械を使って聴力の検査が実施されています。ヘッドホンをつけて実施するあの検査です。検査では、普段の生活・会話で使用される音の高さ(周波数)の1000Hzと聴力の低下を早期に判断するために4000Hzの2種類の音の聞こえを確認しています。加齢と共に高い音から聞こえにくくなっていくため、オージオメーターの検査では4000Hzから先に「所見あり」となっていきます。
通常、人間が聞くことができる音の周波数は20Hzから20kHzといわれています。数年前にモスキートサウンドという高周波の音(17kHz)が話題になりましたが、加齢とともに高い音が聞こえにくくなるため、この音は、20歳代後半以降になると聞こえにくくなっていきます。
また、強い騒音に暴露され続けると音のエネルギーによって聴力が障害されます。これを騒音性難聴といいます。騒音性難聴は加齢による難聴と同様に現代の医学では治療することができません。騒音性難聴の特徴としては、4000Hz周辺の音域の聴力が障害されることが知られています。健康診断の聴力検査で4000Hzに「所見あり」と判定され、仕事で強い騒音に暴露されている場合には、耳栓等の保護具を着用することが聴力のさらなる低下を防ぐための対策となります。加齢による場合には、対策が難しいのですが、耳鼻咽喉科で精密な検査を実施しながら経過を見ていくことが必要になります。お手元に定期健康診断結果があれば、ご自身の聴力検査所見に異常がないかをご確認ください。もし、「所見あり」と書かれていれば、一度、耳鼻咽喉科で精密検査を受けることをお勧めします。
医療法人社団 清水橋クリニック 労働衛生コンサルタント 医師 古川 泰
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